生活・暮らし

統合失調症の人が利用できる社会制度と行政サービスについて

統合失調症の治療は長期間にわたります。そのため、生活面や経済面での問題も出てきます。

しかし、統合失調症の人が利用できる社会制度と行政サービスを上手に活用することで生活面や経済面での負担を減らすことができます。

申請場所はほとんどが市区町村の障がい者福祉窓口です。
相談も対応してくれるのでまずは話を聞いてみるのが良いと思います。

それが難しい場合には、入院・通院先のソーシャルワーカー(社会福祉士や精神保健福祉士など)に相談しましょう。ソーシャルワーカーは福祉の専門職でさまざまな支援制度について詳しく、統合失調症の人やその家族がよりよい社会生活を送れるように協力してくれます。ソーシャルワーカーがいない場合は、看護師や担当医師に相談してみましょう。

この記事は統合失調症の人が利用できる社会制度と行政サービスについてまとめました。
統合失調症の人やその家族が直面している生活面や経済面での負担が少しでも軽くなるお手伝いができたら嬉しいです。

ここでは経済・生活支援の制度について紹介します。
※ここで紹介していない各市町村独自の制度もあります。また、各市町村で申請方法が少し違うことがあったり、事前に準備が必要な書類があります。申請方法やさらに詳しく知りたい場合は各市町村の相談窓口やホームページで確認をしてください。各市町村のホームページがわかりにくいと感じたら、まずは電話で相談するのが良いと思います。

各市町村のホームページ検索にご利用ください。
https://www.j-lis.go.jp/spd/map-search/cms_1069.html
リンク先:地方公共団体情報システム機構(J-LIS) 全国自治体マップ検索

精神障がい者保健福祉手帳(精神障がい者手帳)

精神科の病気があり、長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある人に交付されます。

障がいの程度により1級~3級に分かれています。
等級に応じて医療費や交通費などの助成サービスや優遇措置を受けることが出来ます。

申請方法と利用できるサービスについて

申請条件

精神疾患のために長期にわたって日常生活や社会生活に制約(障がい)があること

対象となる精神疾患と診断されてから6ヶ月以上経過していること

申請は本人がする。(家族やソーシャルワーカーが代用することも可能)

必要書類

申請書

診断書

本人の写真

マイナンバーカード

身分証明書(運転免許証や健康保険証など)

申請窓口

市区町村の障がい者福祉窓口

主なサービス

生活保護の障がい者加算(1級か2級の人のみ)

税制の優遇措置

公共施設の利用料の減免

バス、電車、地下鉄の運賃割引

交通費の助成

医療費の助成

携帯料金の割引

NHKの放送受信料の免除

自治体独自のサービス(市区町村の障がい者福祉窓口に問い合わせる)

 

障がい年金制度

病気や怪我により日常生活や就労が困難になった時に生活費の保障として支払われる年金です。

障がい基礎年金と障がい厚生(共済)年金があり、加入している年金の種類によって支給額が異なります。

障がい基礎年金を請求するための3つの条件

  1. 初診日に公的年金に加入していること
  2. 年金保険を納めていること
  3. 障がいの程度が等級に該当すること
  • 障がい基礎年金
    国民年金に加入している人が請求できる年金で、1級と2級に分けられる。
  • 障がい厚生(共済)年金
    厚生年金や共済年金に加入している人は障がい基礎年金に上乗せして請求できます。1級~3級があり支給額は等級と納めた金額によって変わってきます。

 

医療費公費負担制度

措置入院にかかる費用を公費で負担する制度です。
(本人およびその扶養義務者の所得税が150万円を超える場合は、2万円を上限に自己負担があります。)

措置入院とは、精神障がいまたはその疑いのため入院しなければ自身を傷つけたり、他人に害を与えるおそれのある状態と判断されたときに、知事の命令によって行われる強制的な入院のことです。

 

小児精神障がい者入院医療費助成制度

精神疾患のために入院治療が必要な満18歳未満に対しての制度です。

精神科病棟での入院治療費を公費で負担してくれます。(入院時の食事費用は自己負担)

申請場所

市区町村の障がい者福祉窓口

必要書類

  1. 申請書
  2. 診断書(所定の様式で、申請日から3か月以内に作成されたもの)
  3. 住民票(申請日から3か月以内のもの)
  4. 被保険証の写し

 

心身障がい者扶養共済制度

障がい者を扶養している保護者が加入者として掛け金を支払い、保護者が死亡または重度の障がいになった時、残された障がい者に対して一定額の年金が支払われる制度。

メリット

  1. 毎月2万円が支給される(2口の場合は4万円)
    保護者が死亡したとき又は重度障害になったとき、障害のある方に生涯にわたり支給されます。
  2. 掛け金が割安
    保険に係る経費分を徴収しないため、掛金が民間企業に比べて割安です。
  3. 税制の優遇
    掛金の全額が所得控除の対象となるため、所得税・住民税の軽減につながります。
  4. 公的制度のため安心
    都道府県及び指定都市が条例に基づき実施している、任意加入の公的制度です。

デメリット

  1. 障がいのある人が保護者より先に死亡した場合、年金支給ができない
    1年以上加入した後、障がいのある方が先に亡くなった場合は、すでに払い込んだ掛金は、返還されません。ただし加入期間に応じて、保護者に対して弔慰金が支給されます。
  2. 制度から脱退した時
    すでに払い込んだ掛け金も払い戻しはされません。
  3. 次のいずれかの事由により加入者が死亡したとき
    ・加入日以後1年以内の自殺
    ・障害のある方の故意
  4. 次のいずれかの事由により加入者が重度障害になったとき
    ・加入者の故意又は重大な過失に基づく行為
    ・加入者の犯罪行為
    ・障害のある方の故意による傷害行為
    ・加入前の疾病・災害
    ・加入者が加入前に生じていた所定の障害状態、又は、加入前の原因に
    よって加入者となった後生じた所定の障害状態を有していた場合において、
    すでに障害を生じている身体の同一部位に新たな障害が加重したこと
  5. 掛金額>年金額となる場合がある

例:保護者が50歳、障害のある方が20歳の時に加入した。保護者が80歳で死亡し、子が50歳から65歳まで月額2万円の年金を受給した場合。

この場合1ヶ月18,000円の掛け金で、1年間225,600円の掛け金。

・掛金総額(20年間分)=225600×20
=4,512,000(円)

1ヶ月20,000円の受給、1年間240,000円の受給金。

・年金総額(15年間)=240,000×15
=3,600,000(円)

掛金総額(20年間分)>年金総額(15年間)となり、年金額よりも払った掛け金額の方が多くなってしまいます。

自立支援医療(精神通院)

精神疾患の治療のため、定期的・継続的に通院している場合、かかった医療費の一部を補助する制度です。

制度の対象

外来での投与やデイケア、訪問看護など対象になります。
※入院治療や病院や診療所以外でのカウンセリングは対象外です。

自己負担額

通常3割負担から1割負担に軽減されます。
さらに世帯の所得により、月の負担金に上限が設けられています。
例:年収80万円以下の場合は負担金の上限は月に2,500円。

手続き

市区町村の障がい者福祉窓口、精神保健福祉センター

自立生活援助

障がい者支援施設やグループホームなどを利用していた人で一人暮らしを希望する人などを対象とした制度です。
生活の問題を解決できるように援助してくれます。

対象者

障がい者支援施設やグループホームなどを利用していた人
精神科病棟に入院していた人
自宅から出てこれから一人暮らしをはじめる障がい者の人
今現在一人暮らしをしていて支援が必要な障がい者の人

相談窓口

市区町村の障がい者福祉課

利用料金

1割負担になります。ただし所得に応じて上限が決められています。

期間

原則1年。1年を超えてサービス利用が必要な場合は審査会で審査され必要性が認められれば1度だけ最大1年の更新が可能となります。

サービス内容

定期的(月に2回以上)に利用者の住まいを巡回訪問して、生活面での問題(掃除などの家事や公共料金の支払い、体調について)の確認を行い、必要な助言や医療機関との連絡調節をしてくれます。

生活保護

世帯の収入が基準額以下の場合や生活が困窮した場合に最低限度の生活を保障する制度です。

受給するには条件があります。各地域で支給基準が異なるのでまずは地域の福祉事務所に相談してみましょう。

お住いの地域の福祉事務所は
福祉事務所|厚生労働省の福祉事務所の設置状況の福祉事務所一覧(PDF形式、Excel形式)から確認できます。

ホームヘルプサービス(居宅介護・訪問介護)

障がいのために日常生活を送るのが困難な場合に利用できるサービス。
ホームヘルパーが自宅を訪問し、買い物や炊事や洗濯などの家事や入浴や食事の介助を行います。また、病院に定期的に通院するときにも介助が受けられます。

対象

要介護1以上の認定を受けた人

相談窓口

市区町村の障がい者福祉課

利用料金

市区町村や施設により異なります。必ず確認しましょう。

サービス内容

掃除や洗濯などの家事や入浴や食事、排泄の介助、日用品の買い物や病院への通院などの介助

グループホーム(共同生活援助)

障がい者が集まって共同生活を営む場所のこと。
サービス管理責任者や世話人がスタッフとして配置されています。
入居者が自立した生活を送れるように相談に乗ったり、日常生活上の支援を行います。
無料で施設の資料請求もできますが、一度見学してみると良いと思います。

対象

障がい者手帳を持っている人。
障がい者福祉サービス受給者証を持っているか障がい者支援区分の認定を受けている人。
施設によって入居条件が違う。例えば要支援か要介護かなどいくつか条件がある。

相談窓口

市区町村の障がい者福祉課

利用料金

施設によって、料金は違ってきます。内訳はサービス料や家賃、食費、光熱費などです。

期間

滞在型・・期間は決められていない。
通過型・・原則3年。

内容

日常生活を送る上で必要な能力(買い物や掃除など)を身に着ける支援
通院や服用に関する支援
金銭管理の支援
就労など日中活動の支援
日常生活を送る上で必要な相談や支援
各種手続きなどで必要な相談や支援

包括型地域生活支援プログラム(ACT)

重い精神障がいを持つ人でも地域で安心して暮らしていけるように、医療・福祉・就労を含めた生活支援全般を看護師、精神保健福祉士、作業療法士、精神科医などの多職種の専門家が構成するチームが支援する制度のことです。

ACTでは24時間365日体制で利用者を支援します。専門家が自宅など生活している場に訪問し、支援計画に基づいて利用者やその家族を支援していきます。

症状をコントロールして病気の治療をする医療と生活のしづらさを改善させていく福祉の両面から支援していきます。

ACTは生活の質や精神症状、利用者とその家族の満足度のも効果があります。また入院期間を減らし、地域での生活を安定させる効果が高いため、ACTの取り組みは全国に広がってきています。

ACTの主なサービス内容

  • 精神科治療を継続するための、診療や処方、自宅への薬の持参などの支援
  • 病気に関することや薬の服用など病気を自己管理するための支援
  • カウンセリング
  • 身体的健康に関する支援
  • 買い物、料理、交通機関の利用などの日常生活に関する支援
  • 就労に関し、利用者の希望を実現するための支援
  • 年金や生活保護の利用や金銭管理のアドバイスなどの経済的サービスに関する支援
  • 利用者の家族のための支援
  • 公共施設の利用やグループ活動の参加など社会のネットワークとの関わりの回復と維持のための支援

今回は統合失調症の人が利用できる社会制度と行政サービスについてでした。

手続きは面倒と思う人もいるかもしれません。しかし、制度やサービスを利用することは経済的負担を考えると早めに申請することをおすすめします。

1人では不安な人は身近なスタッフに相談しましょう。きっと協力してくれるはずです。

統合失調症を学ぶのにおすすめの本を一覧にしました。
おすすめ書籍一覧:統合失調症についてを参照してください。

統合失調症の人と家族が少しでも穏やかに過ごせますように。それではまた。

同じ悩みを抱える人との交流の場「家族会」