統合失調症の人の再発の原因②-ストレス・家族の接し方
この記事では統合失調症の人の再発の原因の環境の変化などによるストレスと家族の接し方についてまとめています。
再発しないか心配している家族の方達や退院後の生活に不安を感じている方々に向けて書いています。
再発の原因は大きく分けて2つあります。
- 薬の服用の中断
- 環境の変化などによるストレスと家族の接し方
①の薬の服用の中断については統合失調症の人の再発の原因-①服用の中断についてを参照してください。
この記事を読むことで、再発の原因や回復するために必要な家族の接し方について学ぶことができます。
ストレスによる再発
入院中とは違い日常生活はストレスにさらされる機会が多くなります。
統合失調症の人はもともとストレスに弱い体質のため、不安を感じやすくなっています。
そのため、大きなエネルギーを必要とする環境の変化があると精神状態が不安定になり、再発しやすくなってしまう傾向があります。
環境の変化とは具体的には下記のような出来事があげられます。
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突然の大きな変化によるストレス
リストラ、転勤、事故、親しい人や家族の病気や死など
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第三者からみると喜ばしいが、本人には負担となる変化によるストレス
進学、就職、昇進、結婚、出産など
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人間関係によるストレス
デイケアや職場、学校での人間関係や家族内での葛藤など
ストレスによる再発を防ぐには日々のコミュニケーションが大切です。
どんな時にストレスを感じやすいのかを統合失調症の人との会話から知っておくと再発のサインを見つけやすくなります。
また、統合失調症の人が、自分にあったストレス解消法を見つけることも大切です。
ストレス解消法の例
・友達とおしゃべりをする
・甘いものを食べる
・カラオケで大声をだす
※部屋で大声をだす場合は禁止するのではなく、タオルを口に当てて叫んでもらうなどすると近所迷惑にもなりにくく、大きな声をだすことができると思います。
・体を動かす
※壁をなぐる場合にはクッションをかわりに殴ってもらったり、新聞紙などの紙をビリビリに破いてもらうと良いと思います。
家族の接し方による再発
家族の接し方と再発のしやすさには密接な関係があります。
表情や口調、態度などの感情の表し方を「感情表出(EE)」といいます。
統合失調症の人に対して強い感情表出が向けられることを「高EE」もしくは「EEのレベルが高い」といいます。(以下高EEに統一します)
高EEは次の3タイプに分けることができます。
- 批判的な言動の感情表出
「怠けている」「いつまでもゴロゴロしている」「いつまでも仕事をしない」などの不満や文句を言うことです。 - 敵意のある感情表出
「いっそ殴ってやりたい」「この人のせいで自分の人生が台無しになった」など憎しみを抱いたり攻撃的な態度をとることです。 - 情緒的に過度に巻き込まれている感情表出
「この子には私しかいない」「私がずっと一緒にいてあげなきゃいけない」「全部私がやってあげなきゃ」など過保護や過干渉になってしまうことです。
①~③のいずれの場合でも高EEと言われ、家族に一人でもいると統合失調症の再発が高くなると言われています。
また、①~③のうち最も悪い影響を与えると言われているのが②の敵意のある感情表出です。
高EEの家族で多く見られるのは、母親は統合失調症について理解があるが、父親の理解が得られないというケースだそうです。
例:統合失調症の人(息子や娘)の症状が悪化すると父親が母親を責める(または母親が父親を責める)
なぜ高EEの家族となるのか?
- 統合失調症の症状が激しく、それが慢性的に続いている
家族に不満をぶちまける統合失調症の人の場合は、家族にもかなり強いストレスがかかります。そのストレスが原因で、感情的な接し方になってしまうと思われます。
- 統合失調症についての理解が不足している
統合失調症の症状や治療経過についての知識がない場合、高EEとなる可能性があります。
例えば統合失調症の陰性症状で寝込むことが多くなった場合、理解が不足していると「怠けている」と思ってしまい、不満や怒りを抱くことになり、本人に向かって「いつまでゴロゴロしているんだ」などと言ってしまうことになります。
- 心配になり過ぎて、家族が抱え込んでしまっている
心配しすぎるあまり、何もかも面倒をみてあげようとしてしまい過保護や過干渉になってしまっている。
- その他
経済的な不安や統合失調症の人の将来についての問題を専門家の援助を受けられずに、一人で抱えてしまっている。
高EEの家族がいる場合接する時間も影響する?
ある文献では高EEの家族と一緒にいる時間が一週間に35時間以上の場合と35時間未満に分けた場合で比べています。
結果は、一緒にいる時間が35時間以上の場合の再発率は69%、35時間未満の場合の再発率は28%と再発率に大きな差がみられます。
このことから高EEの家族と統合失調症の人が接する時間が長ければ長いほど再発率が高くなる傾向があると考えられます。
[参考文献:Vaughn CE and Leff JP: The measurement of expressed emotion in the families of psychiatric patients. British Journal of Social and Clinical Psychology, 15: 157-165, 1976.]
回復を促す家族の接し方
ここまでは家族の接し方で再発率が上がる話でした。
ここからは家族の回復を促す接し方について記載していきます。
家族の回復を促す接し方
- 話をよく聞く・聞き上手になる
- 対立は出来るだけ避ける
- 高望みをせず、ゆっくり一歩ずつ進む
- 本人と病気とを区別する
- 自分でできることは自分でさせる
- 適度な距離を保つ
- 一緒に興奮しない
- できたことは褒める・感謝する
- わかりやすく伝える
- 子ども扱いをしない
- 話し合いの中で愛情を伝える
- 話をよく聞く・聞き上手になる
統合失調症の人は考えが上手くまとまらないことがあるため、途中で遮らず、辛抱強く聞いてあげましょう。
話し終わったら「今○○と言ったことはどういうこと?」など質問したり、話を繰り返したり(オウム返し)すると良いでしょう。自分の話を聞いてくれていると満足感を得てくれると思います。
- 対立は出来るだけ避ける
話の途中で矛盾が出てきたり、支離滅裂なことを言ってくることもありますが、指摘したり対立しないようにしましょう。
時間も無駄ですし、不要な争いの原因になります。
それよりもなぜそう思うのかしっかり聞いてあげることの方が良いと思います。
ただし、乱暴なことに対してははっきりと注意するようにしましょう。
- 高望みをせず、ゆっくり一歩ずつ進む
回復してくると次々に目標を設定したくなります。
家族は急いでいるつもりはないかもしれませんが、次々に求められると統合失調症の人は疲れてしまいます。
現状維持も時には必要です。
焦らずゆっくりと進んでいきましょう。
- 本人と病気とを区別する
暴力や暴言が強く表れると「人格がかわってしまった」と思うこともあると思います。
しかし、それは症状があらわれている状態で本来の本人の人格とは違います。
症状は薬を飲むことである程度症状を抑えることができます。
- 自分でできることは自分でさせる
家族がいつまでも手を貸してあげているといつまでも自立ができません。
統合失調症は生活機能が低下する病気と言われているので、身の回りのことを自分でやることも治療の一環になります。
また、出来ることが増えることで本人の自信にもなります。
- 適度な距離を保つ
細かなところまで口を出したり、ささいな行動までチェックしたりはしないようにしましょう。
心配にはなるかもしれませんが、ある程度の距離は保つようにしましょう。
- 一緒に興奮しない
統合失調症の人が興奮しているときには口論にならないようにしましょう。
お互いが感情的に口論しても進展はなく、無意味です。
こちらは冷静に何に怒っているのか根気よく聞いてあげるかその場から離れるようにしましょう。
- できたことは褒める・感謝する
ささいなことでもできたことはほめてあげたり、「ありがとう」と感謝をきちんと伝えてあげましょう。
たとえ最後までできなかったとしても、出来たところや良かった点をほめてあげてください。
小さな成功が自信になっていきます。
- わかりやすく伝える
あいまいな表現はやめましょう。また、伝える際は一つの話題にしぼるようにしましょう。
- 子ども扱いをしない
子供のように軽く見くびってあつかわないようにしましょう。
最初から「わからないだろう」「できないだろう」と決めつけないようにしましょう。
また、自分の意見を押し付けるのではなく、きちんと話を聞いてあげてください。
- 話し合いの中で愛情を伝える
「○○は私にとって大切な家族だよ」と声に出して伝えるようにしましょう。
普段から思ってはいても統合失調症の人にはなかなか伝わりません。実際に声に出して本人にいうことが大事です。
家族の人も自分の時間は大切にする
統合失調症の人に合わせるあまり家族の方たちまで体調を崩すことになっては元も子もありません。
家族の方々は自分たちの生活も大切にし、時には息抜きもしてください。
相談場所や社会保険制度を利用することで自分の時間をもてるかもしれません。
下記に相談できる場所などをまとめていますので、参照してください。
下記に僕の経験を記載します。
僕が父親との接し方で気を付けていたのが話をよく聞くことと、分かりやすく伝えるということでした。父親とは入院前のこともあり正直あまり話したくはなかったですが、薬を服用するようになり症状が改善されたことで前よりはコミュニケーションをとりやすくなりました。また、父親は寝ていることが入院前と比べて多くなりましたが、「怠けている」のではなく、「体力を蓄えている」と理解できるようになったことでイライラすることもなくなりました。
父親が退院する前に統合失調症についての本を家族で回し読みをしたり、今後の接し方について話し合ったりしました。
自分だけでなく家族全員が統合失調症について理解していることが大事だと感じました。
同じ本を読んでも解釈の仕方が違ったりしたので話し合うことは必要だと思います。
今回は統合失調症の人の再発の原因②-ストレス・家族の接し方についてでした。
再発のきっかけになるストレスの原因や回復するために必要な家族の接し方について知りたかった人の役に少しでも立てれば嬉しいです。
僕が統合失調症について調べた際に、参考になった本を一覧にしています。おすすめ書籍一覧:統合失調症についてを参照してください。
統合失調症の人と家族が少しでも穏やかに過ごせますように。それではまた。
同じ悩みを抱える人との交流の場「家族会」
- みんなネットhttps://seishinhoken.jp/profile
リンク先:みんなねっと(公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会) - 全国きょうだいの会(略称)
https://www.normanet.ne.jp/~kyodai/index.html
リンク先:全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会