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統合失調症の人も受給できる障がい年金について-① 

年金と聞くと高齢者になってからもらうお金のことを思い起こす人が多いと思います。

しかし、年金には高齢になった時にもらえる「老齢年金」、大黒柱が亡くなった時にもらえる「遺族年金」、病気や怪我で生活に支障がある時にもらえる「障がい年金」の3種類があります。

統合失調症も障がい年金の対象になります。

障がい者手帳を持っていても、障がい年金をもらっている人は少ないのではないでしょうか。

その原因の1つに障がい年金がどういうものか知られていないことがあげられます。

今回は統合失調症の人も受給できる障がい年金についてご紹介します。

障がい年金とは?

事故や怪我などにより障害を負ってしまったような場合の生活を支えるために支給されるのが、「障がい年金」です。

障がい年金は一定の障がいになった時に受け取ることができる制度で、若い世代の人でも申請をして要件を満たせば、受け取ることができます。

対象になる病気や怪我

  • 仕事中の怪我
  • 業務外の怪我や病気
  • 交通事故による障がい
  • 生まれつきの障がい

よくある誤解として次の2点があります。

  1. 障がい者手帳がないともらえない
  2. 働いているともらえない

障がい年金は障がい者手帳がなくても、もらうことができます。
逆に障がい者手帳があっても障がい年金をもらえないこともあります。
勘違いされることもありますが、障がい年金と障がい者手帳はまったくの別ものです

また要件を満たし、障がい年金機構が定める等級に該当すれば働いていても障がい年金をもらうことができます。

障がい年金の等級

障がい年金の等級は1~3級まであります。
(1級が最も障がいが重い。)

どの等級に分類されるかは日本年金機構から審査を委託された障がい認定医(日本年金機構の認定医)が提出された診断書などから判断します。

障がいの程度は以下の通りです。

1 級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずる
ことを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能なら
しめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができな
い程度のものである。

2 級
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制
限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとす
る。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを
必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて
困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。

3 級
労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度
のものとする。
また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限
を加えることを必要とする程度のものとする。(「傷病が治らないもの」については、
第3の第1章に定める障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であって
も3級に該当する。)

引用:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構

難しい表現もあるため簡単に要約します。

1級

身の回りのことが辛うじてできる。

2級

家庭内の非常に簡単なことはできるが、労働でお金を得ることが出来ない。

3級

病期や怪我が治っていないため、労働に著しい制限を受けるか労働に著しい制限を加えることを必要とする。

3級より症状が軽く障がい年金の等級に該当しない場合も「障がい手当金」という一時金を受け取れるケースがあります。
(初診日に厚生年金に加入しているなど一定の条件があります)

障がい年金の等級については上記でも触れましたが、より詳しく知りたい方は下記を参照してください。

国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(リンク先:日本年金機構)

障がい年金と障がい者手帳はまったくの別ものです。

「障がい年金の等級基準」と「障がい者手帳の等級基準」は違います。
そのため障がい者手帳の等級が1級でも障がい年金の等級が1級になるとは限りません。

障がい年金はいくらもらえる?

障がい年金には「障がい基礎年金」「障がい厚生年金」があります。

障がい基礎年金は初診日に国民年金に加入していた場合、障がい厚生年金は初診日に厚生年金に加入していた場合に受け取ることができます。

初診日については下記で説明します。

障がい基礎年金

初診日に国民年金に加入していた人や20歳前に初診日がある人の内、等級が1級か2級の人は障がい基礎年金を受給することができます。

自営業者や専業主婦(夫)、学生などが該当します。

障がい基礎年金の金額(令和3年4月以降:令和3年9月時点)

等級 年金額(年間) 子供の加算
1級 97万6,125円 子供2人まで→1人につき22万4,900円
子供3人目から→1人につき7万5,000円
2級 78万900円

障がい厚生年金

初診日に厚生年金に加入していた人は、障がい厚生年金を受給することができます。
会社員や公務員などの人が該当します。

等級が1級と2級の人は厚生年金に加え、配偶者の加給年金と障がい基礎年金、子供の加算分を受け取ることもできます。

障がい厚生年金の金額の計算式
等級 令和3年4月以降の支給額(令和3年9月時点)
1級 報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金(22万4,700円)
2級 報酬比例の年金額+配偶者の加給年金(22万4,700円)
3級 報酬比例の年金額(最低保証58万5,700円)
障がい手当金
(一時金)
報酬比例の年金額×2(117万2,600円に満たない場合は117万2,600円)

報酬比例の年金額平成15年3月以前の加入期間の金額+平成15年4月以降の加入期間の金額

平成15年の3月以前と4月以降で分けているのはこの時期を境に計算式が変わっているためです。

障がい厚生年金の受給額の例
下記はおよその目安になります。

等級 独身の場合の
年間受給額
1級 約144~180万円
2級 約120~144万円
3級 約60~72万円

参考:NPO法人 障害年金支援ネットワーク

障がい年金をもらうための3つの大切な事

障がい年金を受け取るためには次の3点が大切なポイントになります。

  1. 初診日
  2. 保険料の納付
  3. 障がいの状態

初診日

初診日とは怪我や病気で初めて医師の診断を受けた日で、治療行為や療養に関する指示があった日になります。
必ずしも病名が確定した日ではありません。

たとえ、最初の受診で診断がつかなかったり、1日しか行かなかった場合でも初診は最初に行った病院の日にちになります。

例:
9/1にA病院受診したが診断名つかず、9/8にB病院受診し診断名が確定
→初診日はA病院を受診した9/1になる。

初診日に加入していた年金制度により申請できる障がい年金が違ってくるため初診日を確定させることは重要になります。

相当因果関係とは?

前の病気と後の病気に「相当因果関係あり」とされた場合、病名が違っていても同一傷病として扱われるため、初診日は前の病気の最初の受診日になります。

例:
糖尿病の人がその後、糖尿病性腎症となった場合は「相当因果関係あり」と認められるため、糖尿病の時に初めて受診した病院(最初に行った病院)の日にちが初診日になる。

一度治癒した後に再発した場合

一度治癒したことが認められれば、再発後の初診日がその病気の初診日になります。

治癒したと認められるかは、病気や怪我の種類や再発の期間などによって判断されます。

保険料の納付

20歳後に初診日がある場合、初診日の前日までに一定の保険料(初診日の前々月まで)をしっかりと納めていないと障がい年金を受け取ることが出来ません。

納付要件を満たしていればOK

ただし、未納の期間があっても次の条件を満たしていれば大丈夫です。

  1. 公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
  2. 初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと(初診日において65歳未満にかぎる)

保険料を納められない場合は免除の申請をする

免除期間は未納期間とはならず、納付済み期間として扱われます。

障がいの状態

障がい等級がどれになるか確認しましょう。

上記記載の障がい年金の等級を参考にしてください。

等級は申請を出すときの診断書で等級を判断されます。
たとえ等級に該当しなくてもその後悪化した時に再度申請することができます。

この時、障がい認定日がいつになるかが重要になります。

障がい認定日とは障がいの程度を判断した日になります。

障がい認定日はいつになるか

  1. 原則は初診日から1年6カ月が経過した日が障がい認定日になる
  2. 例外として1年6カ月よりも前に治ったor症状が安定したと認められた時にはその日が障がい認定日になる
  3. 20歳前に初診日がある場合は、20歳の誕生日の前日が障がい認定日となる

障がい年金は障がい認定日以降に受給できることになっているため、上記①に該当する場合、1年6カ月を経過しないと障がい年金を受給することができません。

 

今回は統合失調症の人も受給できる障がい年金についてでした。

障がい者手帳を持っていて、障がい年金をもらいながら働いている人は全体の2~3割と言われています。

手続きが複雑なため途中でやめてしまう人もいるかもしれませんが、そんなときは一度社会保険労務士に相談してみましょう。
特に障がい年金を得意とする社会保険労務に相談するのが良いと思います。

今回の記事が困っている人達の役に少しでもたてたら嬉しいです。

統合失調症を学ぶのにおすすめの本を一覧にしました。
おすすめ書籍一覧:統合失調症についてを参照してください。

統合失調症の人と家族が少しでも穏やかに過ごせますように。それではまた。

同じ悩みを抱える人との交流の場「家族会」